WebディレクターやWebデザイナー、コーダーなどのクリエイティブ職の仕事を探している時、求人票の勤務時間の項目に「フレックスタイム制」や「裁量労働制」と書かれているものを目にすることがあると思います。
“フレックス”や“裁量”という言葉から「自由度が高い働き方かな?」と想像はできるものの、両者の違いをはっきりと分かっている人は多くはないでしょう。
似て非なる「フレックスタイム制」と「裁量労働制」。両者の違いを知って、どちらの働き方が自分に合っているのかを確認してみてください。
フレックスタイム制とは、「1日の労働時間の長さを固定せず、3カ月以内の一定期間で定めた総労働時間の範囲で、労働時間を自分で決めることができる」変形労働時間制度の一つです。
職業やライフスタイルが多様化してきた中、労働者が仕事と生活を両立できるように、1998年4月の労働基準法の改正によりはじまった制度です。
“3カ月以内の一定期間で定めた総労働時間の範囲”というのは、導入する企業の職場毎に定められた「労使協定」に記載されており、その他の条件・ルールなども定められています。
「労使協定」で定められている内容とは?
フレックスタイム制の対象者の範囲 | 「すべての労働者」や「特定職種の労働者」などが定められています。 |
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フレックスタイム制の対象となる精算期間 | 「1週間」や「1カ月」、「3ヵ月」など、“3カ月以内の一定期間の範囲”が定められています。 |
精算期間における総労働時間 | 「40時間」「160時間」など、“精算期間で定めた範囲で働く必要がある総労働時間”が定められています。 |
標準となる1日の労働時間 | 有給休暇を取得時や、出張などの事業場外労働時などに、1日分として換算する労働時間が定められています。 |
「コアタイム」を定める場合の 開始時刻・終了時刻 |
必ず勤務しないといけない労働時間帯が定められています。 |
「フレキシブルタイム」を制限する場合の 開始時刻・終了時刻 |
開始時刻8時~10時、終了時刻15時~19時など、自分で出社・退社時間を決めることができる時間帯が定められています。 |
裁量労働制とは、1日の労働時間の長さに関係なく、契約した時間分を働いたとみなされる制度です。
例えば、「労使協定」で労働時間を1日7時間と定められている場合(これを「みなし労働時間」と言います)、実際の労働時間が4時間でも10時間でも、労働時間は7時間と判断されます。
開始時刻・終了時刻などの1日の勤務時間のコントロールは労働者の裁量にゆだねられています。
ただし、所定労働日数については「労使協定」で定められている場合があります。
裁量労働制は、固定時間制度では不都合な人や業務効率が悪くなる人が、自由度の高い働き方ができように設けられている制度です。
現状、裁量労働制はすべての業務に導入することはできず、「専門業務型」と「企画業務型」に当てはまる業務のみと限定されています。
専門業務型 | 開発者や仕業、エンジニア、クリエイターなどの専門性の高い業務であること。 |
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企画業務型 | 企業にとって重要な決定を行う部門で、企画立案・分析などを行う業務であること。 |
フレックスタイム制は、一定期間で定めた総労働時間分を満たせば、自分で1日の労働時間を「労使協定」の範囲内で決めることができます。加えて、一定期間で定めた総労働時間を超えた分は、残業手当が支給されます。
裁量労働制と比較した場合、ある程度の自由度に加えて、残業手当もしっかりと受け取ることができるのが、フレックスタイム制のメリットと言えます。
裁量労働制と比較した場合に、自由度が低いのがデメリットです。また、企業の職場毎に定められた「労使協定」の内容によっては、自由度の高い働き方をほとんど享受できない場合もあります。
「フレックスタイム制」という言葉だけで判断しないように注意しましょう。先述したとおり、「労使協定」の内容によって、働き方は大きく異なります。特にコアタイム・フレキシブルタイムはしっかりと確認するようにしましょう。
また、「フレックスタイム制は残業手当を支給しなくても良い」と勘違いしている企業もあるようです。フレックスタイム制は、一定期間で定めた総労働時間を超えた場合に、残業手当が支給されます。深夜割増賃金と休日割増賃金についても労働基準法で認められています。
裁量労働制のメリットは、1日の労働時間を自分で決めることができる、自由度の高さです。フリーランスで活躍している方、Wワークをされている方など、高い技術力を持って効率よく仕事を進めることができる人にとっては、理想の働き方の一つと言えるでしょう。
長時間労働になっても、残業手当が変わらないのが、裁量労働制のデメリットです。裁量労働制の場合、「労使協定」で定められた労働時間が8時間を超えた時間分が、残業手当として認めらます。
例えば、「労使協定」で定められた労働時間が9時間であれば、9時間から8時間を引いた1時間分が残業手当として支払われます。
ただし、深夜割増賃金と休日割増賃金は労働基準法で認められています。
企業から任される業務内容・量に対して、自身が相応の技術力を持っているか冷静に判断しましょう。自分にとって業務内容・量が見合わなければ、長時間労働となってしまい、せっかくの裁量労働制のメリットを享受することはできません。
またフレックスタイム制と同様、残業手当、深夜割増賃金、休日割増賃金について正しく認識していない企業があるようですので、不払いなどには注意しましょう。
「フレックスタイム制」と「裁量労働制」は似ているようで、その働き方は大きく異なります。働き方の自由度だけを考えると「フレックスタイム制」よりも「裁量労働制」のほうが魅力的に映りますが、メリットを享受するためには、企業から任された仕事をまっとうするだけの技術力の高さが求められます。「フレックスタイム制」「裁量労働制」それぞれのメリット・デメリット、注意点を知ることはもちろん、“今”の自分に合っているかも冷静に判断しましょう。