フロントエンドエンジニアになるために資格・検定は必要か?――少しでもWeb業界で働いたことがある人であれば分かると思いますが、実は「フロントエンドエンジニアになるための必須の資格」があるわけではありません。実際、資格を持たずに最前線で活躍しているフロントエンドエンジニアは多数います。しかしながら「資格・検定をとることに意味がないか」と問われるとそうではありません。今回は、フロントエンドエンジニアが資格・検定を取得するメリット、フロントエンドエンジニアにおすすめの10の資格・検定を紹介します。
フロントエンドエンジニアは業務を遂行する上で「HTML・CSS」「JavaScript」をベースに、「CMS」「UI/UX設計」「サーバーサイド関連(PHPやRuby)」などの知識・スキルを求められますが、それらの有無・優劣を採用担当者に提示することは非常に難しいです。経験が豊富であれば、経てきた実績によってある程度は伝わりますが、経験の浅い方・未経験の方ではなおさら困難と言えるでしょう。
しかし資格・検定を取得していれば、一定水準の知識・スキルを保有していることを客観的に証明することができます。取得した資格・検定が難易度の高いものであれば、なおさら仕事への熱意や成長への意欲をアピールする材料にもなるでしょう。
フロントエンドエンジニアの業務として「SEOやアクセシビリティ、ユーザビリティを考慮したコーディング」「CMS構築・機能追加」「JavaScriptなどを用いたWebサイトへの機能実装やライブラリ開発」「レスポンシブ対応やモバイルファースト、UI/UXを意識したサイト設計・構築」などが挙げられますが、それら全てに携わるフロントエンドエンジニアばかりではありません。一部のみを担う場合もあり、企業やプロジェクト、個人の技能によって様々です。また当然、開発言語や実装ルールなども一律ではなく、独自の方法を取っている企業もあり、フロントエンドエンジニアの業務内容や働き方は十人十色と言えるでしょう。そのため、企業Aで長年培った経験・スキルが、企業Bでは通用しない、役に立たないということも、残念ながらままあります。転職などを考えるのであれば、「どのような現場でも通用する知識・スキル」は、最低限身につけておくべきと言えます。
そこで有効となるのが資格・検定の取得です。フロントエンドエンジニアとして、広く必要とされる知識・スキルを、体系的かつ網羅的に学ぶことができます。もちろん中には、既に身につけていた知識・スキルもあると思いますが、学習を通じ理解を一層深めることで、業務のスピード・クオリティアップなどにつなげることができます。
フロントエンドエンジニアは、WebディレクターやWebデザイナー、サーバーサイドエンジニアなど、様々なメンバーとやり取りをする場面が数多くあります。彼らと円滑かつ的確にコミュニケーションを図るためには、専門用語はもちろん、業務を遂行する上でどういった情報が必要なのかなど、それぞれの専門家に対する理解といわゆる“共通言語”が必要です。“共通言語”があれば、目指す設定についてイメージを共有しやすくなります。そのために有効な手段が、それぞれの業務に関連する資格・検定を取得することです。一つひとつの発言に説得力が増し、信頼度もアップ、様々な良い影響を与えてくれるでしょう。
HTML5、CSS3、JavaScriptなど最新のマークアップに関する知識とスキルを認定する試験です。試験のレベルとしては、マルチデバイスに対応したWebコンテンツ制作の基礎スキルを認定する「レベル1」と、システム間連携や最新のマルチメディア技術に対応したWebアプリケーションや動的Webコンテンツの開発・設計スキルを認定する「レベル2」に分かれています。フロントエンドエンジニアであれば「レベル2」の合格を目指したいところです。
なお「レベル2」から受験することはできますが、「レベル2」の認定には「レベル1認定を保持していること」の条件が含まれます。「レベル2」のみに合格しても認定資格は取得できないので注意しましょう。
参考:https://www.sikaku.gr.jp/web/wc/
Webサイト制作のデザイン能力およびWebページのコーディング能力を認定する試験です。レベルは2つに分かれており、HTML5、CSSを用いたWebページのデザインやレイアウト、簡単なコーディングなどを行う知識・スキルが認定される「スタンダード」、ユーザビリティやアクセシビリティを考慮したWebデザイン表現、スクリプトを用いた動きのあるWebページの表示、マルチデバイス対応、新規サイト構築の知識・スキルが認定される「エキスパート」があります。
「スタンダード」を合格しないと「エキスパート」を受験できない、といったことはないので、フロントエンドエンジニアであれば「エキスパート」の資格取得を目指しましょう。
参考:https://www.ciwcertified.com/ciw-certifications/web-and-mobile-design-series/advanced-html5-and-css3-specialist
Certification Partner社によって運営されているインターネット技術者の技術者認定資格CIW(Certified Internet Web Professional)のWeb Designシリーズの一つです。国際資格のため、海外での就業を目指す上でも役に立つ資格となります。
資格名称には「HTML5 & CSS3」とありますが、それだけではなく、JavaScriptの基礎知識・スキルを備えているかどうかも問われます。フロントエンドエンジニアとしての資格としては若干、物足りないところがあるかもしれませんが、海外で活躍することを視野に入れているのであれば、マークアップの基本スキルを有していることを国際的に証明できる資格として取得しておくとよいでしょう。
参考:https://www.ciwcertified.com/ciw-certifications/web-development-series/javascript-specialist
Certification Partner社によって運営されているインターネット技術者の技術者認定資格CIW(Certified Internet Web Professional)のWeb Development シリーズの一つです。国際資格のため、海外での就業を目指す上でも役に立つ資格となります。
資格名称の通り、JavaScriptに特化した珍しい資格です。フロントエンドエンジニアとして保有しているべきベースラインの知識・スキルとして「JavaScriptをマスターしていること」を求める企業も少なくありませんから、海外での就業を視野に入れていない方にとっても取得価値が高い資格の一つと言えます。
試験名称からも分かるように資格取得によりプログラミング言語(オブジェクト指向スクリプト言語)PHPの専門知識・技術を持っていることが認定される試験です。試験のレベルとしては、PHPプログラミングの基本知識を問う「初級試験」、PHPの言語仕様から実用的なプログラミングテクニックまでの知識を問う「準上級試験」「上級試験」、さらに上級試験のスコア90点以上で所定の提出文章が承認された場合、「PHP技術者認定ウィザード」に認定されます。
PHPは、Web開発によく使用されるプログラミング言語であり、WordPressをはじめとしたCMSの機能追加などで使用するほか、サーバーサイドエンジニアと連携する上でも必要となる知識・スキルです。フロントエンドエンジニアを目指している方、フロントエンドエンジニア初心者の方は「初級試験」の資格は持っているとよいでしょう。
参考:https://www.ruby.or.jp/ja/certification/examination/
プログラミング言語(オブジェクト指向スクリプト言語)Rubyをベースとしたシステム設計・開発・運用ができる知識・スキルを持っていることが認定される試験です。資格区分としては、基本的な技術レベル(文法やオブジェクト指向、組み込みライブラリ、実行環境など)を持つことを認定する「Silver」と、Silverで求められる範囲を更に掘り下げた知識に標準添付ライブラリ知識やアプリケーション設計に必要となるクラスやオブジェクトに関する知識を追加し、Rubyによるプログラム設計技術を持つことを認定する「Gold」に分かれています(2020年6月末現在、「Platinum」は策定中)。
PHP同様、RubyもWeb開発によく使用されるプログラミング言語で、Ruby on Railsというフレームワークで効率よく開発できるため、Rubyを使用してWebサービス/Webアプリケーションを立ち上げる企業も増えています。フロントエンドエンジニアを目指している方、フロントエンドエンジニア初心者の方は「Silver」の資格くらいは持っておいたほうがよいでしょう。
Linux技術者に求められる技術力を証明できる認定資格です。Linux技術者認定資格は現在、1から3までのレベルが設定されています。仮想環境を含むLinuxシステムの基本操作と構築、運用が行える技術者であることが認定される「レベル1」、仮想環境を含むLinuxのシステム設計、ネットワーク構築において、アーキテクチャに基づいた設計、導入、保守、問題解決ができる技術者であることが認定される「レベル2」、エンタープライズレベルでの仕事ができる技術者であることが認定される「レベル3」に分かれています。
フロントエンドエンジニアの場合、大規模サービスで用意された開発環境を操作・調査する際などにLinuxの知識・スキルが求められる場合があるので「レベル1」はおさえておくとよいでしょう。なお「レベル1」には「101試験」と「102試験」の2つの試験があり、認定には両方の試験に合格する必要があります。いずれかの試験に合格したのち、もう一方も5年以内に合格しなければいけない、という期限があるので注意しましょう。
「Webデザイナー試験」は、Webデザインの用語やルール、HTMLやCSSの書式や基本設計など、Webデザインに関する一定レベルの知識を正しく理解しているかを問う試験です。
基本的にフロントエンドエンジニアはWebデザインそのものを手掛けるポジションではありませんが、Webデザイナーと連携する場面は多くあります。たとえば技術的にデザイン実装が難しい場合など、Webデザイナーと一緒にデザインを考えることもあります。Webデザイナーと円滑なコミュニケーションを図る上で、Webデザイン関連の資格を取得しておいて損はないでしょう。
参考:https://www.webdesign.gr.jp/
Webデザイン系資格の中で唯一の国家資格です。資格取得に向けて、Webデザインだけでなく、インターネットに関連する幅広い知識を身につけることができ、検定に合格すると「ウェブデザイン技能士」の合格証書が発行されます。
国家資格というと厳しい受験資格などがあるように感じますが、試験レベル1~3級のうち、3級であれば実務経験もしくは学校卒業・訓練校修了(協会が認めたもの)などの特別な受験資格はなく、「Webの作成や運営に関する業務に従事している者および従事しようとしている者」であれば誰でも受験することが可能です。
参考:https://www.hcdnet.org/certified/
「人間」を中心にすえて、「人間」の要求に合わせることを優先して、モノ・サービスの設計などを行う――そのような「人間中心設計(HCD, Human Centered Design)」の専門スキルを評価し認定するのが人間中心設計専門家認定試験です。
昨今、Webサービスやアプリケーション開発において当たり前に求められるようになってきたUI/UX設計。フロントエンド部分の開発における最上位職種として、UI/UXデザイナーと円滑なコミュニケーションを取り、Webサービスやアプリケーションに正しく実装するために、フロントエンドエンジニアにもUI/UX設計の知識が求められています。UI/UX設計の理解をさらに深めたい方、自身の設計の正否を確認したい方は受験してみるとよいでしょう。なお認定対象には「スペシャリスト」「専門家」があり、「スペシャリスト」は実務経験2年以上、「専門家」は実務経験5年以上、と受験資格が異なりますので注意が必要です。
フロントエンドエンジニアになるために資格・検定は必要ありません。しかしながら、資格・検定の取得に意味がないわけではありません。
たとえば転職時など、可視化しづらいフロントエンドエンジニアの知識やスキルを客観的に証明する材料となります。また、部分的な業務に従事している方や経験が浅い方で「知識やスキルに偏りがある」と感じている方であれば、資格・検定の取得を目指して体系的かつ網羅的に学ぶことで、様々な現場で通用する知識・スキルを身に付けられます。一緒に働くメンバーとの意思疎通に悩んでいる方は、相手側の業務に関連する資格・検定を取得することで、コミュニケーション改善につなげられるでしょう。
今回紹介した10の資格・検定の中には、今の自分に役立つものがきっとあるはずです。積極的にチャレンジしてみましょう。資格・検定の取得を含めて、キャリア相談をしたい方は、ぜひ一度、Webistまでお問い合わせください。