オファー面談は「条件面談」「処遇面談」とも呼ばれるように、入社後の待遇について確認や、働き方の疑問を解消するための大切な機会です。この記事では、IT・Web業界のオファー面談ではどのようなところに注意が必要なのかを解説します。
「オファー面談」とは、企業が内定者に対して入社後の労働条件を開示するために行う面談です。内定通知書などの書面をもとに、年収、業務内容、各種制度や手当などについて説明がなされます。オファー面談は内定が出された後に行われるため、質問内容や返答が合否そのものには関係しません。オファー面談の内容によっては、求職者の方から入社を辞退することもできます。
しっかりと内容を確認することが、スムーズに業務をスタートする第一歩です。自分が働いているところを想像しながら臨みましょう。一般的なオファー面談の内容については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
IT・Web業界は、業界特有の働き方や、特殊な制度を設けている企業もあります。入社に際して疑問に思っていることや不安に感じることがあれば、このオファー面談の場で解消しましょう。
ここからはIT・Web業界のオファー面談で確認しておくべきポイントを紹介します。
入社にあたって最も大切なことの一つは「自分がどんな仕事をするのか」をはっきりさせておくことです。オファー面談の場では、できるだけ具体的な仕事内容を確認しておきましょう。
企業によっては「Webディレクター」「Webデザイナー」といった大まかな職種で求人募集や選考を行い、内定後に、担当するサービス・業務領域を決定するケースがあります。特に自社サービスと受託制作の両方を手がけている企業の場合は、同じ社内の同じ職種であっても働き方が全く異なる場合があるため注意が必要です。
書面に書かれている「業務内容」は入社後にある程度の変更があることを見越し、概要だけが掲載されていることがあります。自分がどの部署でどのようなサービスを担当し、どのような役割が期待されているのか、どの程度のスケジュールで動く業務が多いのかなど、しっかり確認しておきましょう。
働く上で、何と言っても気になるのは給与でしょう。オファー面談の利点は、選考段階では聞きにくい「お金」に関する質問をしやすいことです。給与は、年収や月収などの「総額」に目が行きがちですが、オファー面談では、具体的な内訳についてもしっかりとチェックしましょう。
そもそも給与は、基本給をベースとして、通勤手当や役職手当、住宅手当、インセンティブなどの様々な手当を含んだ金額で構成されています。そして手当は、社員全員に支給される「一律手当」と、社員によって支給金額が異なる「変動手当」に分けられます。
これらの「総額」が月収や年収と呼ばれるわけですが、内訳をチェックしなければ、表面的な「額面」の高さで判断してしまうことになってしまいます。
具体例を挙げてみましょう。例えばA社とB社の2つの企業があるとします。両方の求人情報には、A社が月収40万円、B社が月収30万円と記載されています。求人情報だけで判断するとA社の条件が良いように見えますが、内訳を確認すると以下のようになっていることが分かりました。
A社)基本給15万円+一律手当5万円+変動手当20万円
B社)基本給25万円+一律手当5万円
A社の場合、月収40万円のうちの20万円は変動手当です。これは、月によっては月収20万円になってしまうリスクがあるということ。一方B社は変動手当が含まれていませんので、毎月安定して月収30万円を得ることができます。どちらが良いかは考え方次第ですが、内訳を確認しなければ両者の違いに気づかず、結果的に不本意な転職となってしまう可能性があります。
その他、給与に関する確認事項として挙げたいのが「月給制」ではなく「年俸制」の場合。IT・Web業界では「年俸制」を採用している企業が多くあります。年俸制は、給与を1年単位で決定する給与形態のこと。注意すべきは、年俸金額内に賞与を含む場合と、含まない場合があるという点です。両者の年収差には大きな違いがありますので、忘れずに確認しておきましょう。
続いて給与以外に支給される手当についても確認しましょう。近年では、優秀な人材を確保する目的もあって、給与以外の手当を充実させている企業も増加しています。特に、人材の確保に苦労しているIT・Web系の企業は、その動きが顕著になっています。
ここでは通勤手当や残業手当、住宅手当、賞与などの一般的なもの以外をご紹介します。企業によって呼称は異なりますが、以下のような手当を整えている企業が多いようです。
・資格取得支援制度/研修支援制度/書籍購入支援制度
・ストックオプション/社員持ち株制度
・退職金/積立金制度
変化のスピードが速い IT・Web業界は、日々、新しい知識や技術を身につけることが求められます。勉強熱心な人ほど、書籍購入やイベント・セミナー参加費がかさむことでしょう。資格取得支援制度/研修支援制度/書籍購入支援制度または類似する福利厚生がないかを確認しておきましょう。なお、こういった成長意欲が伝わる質問は、企業側にネガティブな印象として受け取られることは基本的にありません。面接時に確認しても良いでしょう。
ストックオプション制度とは、会社が役員や従業員などにあらかじめ定めた価格(行使価格)で自社の株式を購入できる権利を与えるものです。株価が行使価格を上回れば、その差額がそのまま報酬に相当するため、会社役員などに対する業績連動型インセンティブ報酬として利用されています。例えば常に1株10,000円で購入できる権利を保有しているとします。市場価格が50,000円になった時に権利を行使して10.000円で購入、それを即時売却すれば40,000円の利益を確保できる、という仕組みです。
同様に会社の株に関する制度として紹介したいのは、社員持ち株制度。従業員の自社株取得を奨励する制度のことです。従業員の福利厚生施策の一環として行われます。ストックオプション同様、業績変動型の資産であり、業績向上によって株価が上がれば資産が構築できる、というものです。
企業の成長率によって報酬が大きくなるストックオプション/社員持ち株制度。社員や役員のモチベーションを高めるために、IT・Web業界のベンチャー企業がよく採用していると言われています。企業によっては高額の利益が期待できますので、オファー面談で確認しておきましょう。
近年、IT・Web系の企業だけではなく、退職金を支給しない企業が増えています。退職後の生活にかかわる要素なので、「入社前から気が早い」と思わず確認しておきましょう。退職金がない場合は、積立金の制度や保障があるかどうかも確認しておくとよいでしょう。
勤務時間や場所の確認もしっかりとしておきましょう。先述したとおり、IT・Web業界は残業が多いことも否めません。残業時間およびフレックスタイム制や在宅勤務制度など有無も含めて、より具体的に確認を行い、各種条件について納得した上で就業しましょう。
最近では、「ノー残業デー」「○○時の全社消灯」などを義務付けている会社も増えてきています。オファー面談では、その企業で実際に働いている同じ職種・役職の人の、残業時間を含めた労働環境などを必ず確認するようにしましょう。
最近は育児や介護など、個人々々のライフプランを考慮した、多様な働き方を認める企業も増えています。IT・Web業界で、長くWebデザイナーやWebコーダー、エンジニアとしてのキャリアを考えるのであれば、今現在の状況のみならず将来的なことでも、その企業でどのような働き方ができるのかを確認しておくことはとても大切です。フレックスタイム制や在宅勤務制度など、社内にどのような制度があるか、その制度を利用して、どんなキャリアを構築していける可能性があるのか、事前にしっかりと確認しておきましょう。
選考から解放され、オファー面談で気を抜いてしまう人も多いものです。しかし、オファー面談は今後の働き方を決める重要な場。合否に関係はありませんので、疑問に感じている点や、不安に思う項目があれば、気後れせずに質問や提案をしましょう。「正当な条件で勤務できるか」「自分が望む働き方ができるか」を見極め、納得した上で就業できるよう、オファー面談をぜひ活かしてください。