今回は、未経験・初心者から企業のグラフィックデザイナーになる方法をまとめました。給与水準やキャリアパス、年収アップのコツまで紹介するので、これからグラフィックデザイナーを目指す方はぜひ参考にしてみてください。
グラフィックデザイナーは、紙媒体を中心としたデザイン制作が主な業務です。デザインの技術に加えて、紙面を扱うためのDTP・印刷の基礎知識や媒体特性の理解、クリエイティビティが求められる仕事です。
グラフィックデザイナーと比較されがちなWebデザイナーは、Webサイトのレイアウト設計、掲載する装飾パーツの制作、コーディングが主な業務です。HTMLやCSSなどの習得が必要なことに加えて、デザインに関しても「マーケティング効率の良さ」「表示速度の早さ」などを意識することが求められます。
こうした仕事の違いを頭に置いた上で、グラフィックデザイナーの仕事内容を見てみましょう。グラフィックデザイナーの仕事内容は、大きく以下の3つのステップに分かれます。
・デザインコンセプトの設計
・デザイン制作
・カンプデータのチェック、納品
以下、詳しく見ていきましょう。
グラフィックデザイナーはクライアントの要望に沿ってデザインを作成します。このときに、クライアントの要望をかなえるために打ち出す企画・アイデアを「デザインコンセプト」といいます。商品やサービスを多くの人に見てもらうために効果的なデザインを設計することは、グラフィックデザイナーの大切な仕事のひとつです。
デザインコンセプトの設計に必要な情報は、社内の担当営業やディレクターから共有されることもあれば、クライアントとの打ち合わせに同席して自らヒアリングする場合もあります。
グラフィックデザイナーのメイン業務とも言えるのが、デザイン制作です。設計したデザインコンセプトに沿い、Adobe IllustratorやPhotoshopなどのソフトを用いて紙面のデザインをします。
デザインは人によって感じ方や受け取り方が異なるため、デザインコンセプトとずれていないか、ディレクターや他のデザイナーの意見も確認しながら進めていくと安全です。
カンプデータとは、クライアントに提供する「完成見本」です。できあがったグラフィックデザインを実寸サイズにプリントアウトして、クライアントと共に、最終的なチェックを行います。紙媒体は、印刷後に不備が見つかった場合には余計な手間やコストが発生しますし、発行後に至っては取り返しがつきません。ミリ単位のレイアウト調整、文章の誤字・脱字、視認性など、不備が一切ないよう徹底的に確認していきます。
実際の求人を参考に、グラフィックデザイナーの年収やキャリアパスについて確認してみましょう。
今回は、グラフィックデザイナーによくある「未経験者歓迎」の求人と、「経験者優遇」の求人をご紹介します。年収やキャリアアップのポイントなども解説しますので、ぜひ参考にしてください。
グラフィックデザイナーの求人で「未経験者歓迎」と記載があるものは、ある程度デザインのフォーマットが決まっているものが目立ちます。また、未経験であっても、Adobe IllustratorやPhotoshopの使用経験を必須条件にしている求人が多いため、独学やスクールでの習得が必要です。
雇用形態 | 契約社員 |
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収入 | 年収300万~400万円 |
業務内容 | 作業指示に従ってクライアント制作物のグラフィックデザインを行います。 具体的には、会社案内や社内報など、ある程度フォーマットの定まった印刷物のデザイン制作からお任せします。 |
募集要件 | 【必須の経験・スキル】 ・Illustrator、Photoshop、InDesignの使用経験 ・ポートフォリオ提出 【歓迎する経験・スキル】 ・デザインの実務経験2年以上、もしくは相当するスキル ・InDesignでのカタログ、パンフレット、ポスター制作経験 |
グラフィックデザイナーの求人で「経験者優遇」と記載があるものは、クライアントへのヒアリングやデザインコンセプトの設計といった上流工程から携われるものが多く、媒体・制作物の幅がぐっと広がるのも特徴です。クライアントのマーケティング成果を左右するような仕事も多く、仕事の責任も大きくなります。
雇用形態 | 正社員 |
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収入 | 年収400万~650万円 |
業務内容 | 企画、社内外打合せ、ラフ提案、カンプ制作、撮影ディレクション、フィニッシュワークまで一連のグラフィックデザイン業務をご担当頂きます。制作物はポスター、パンフレット、チラシ、雑誌広告、新聞広告、屋外広告など多岐にわたります。 |
募集要件 | 【必須の経験・スキル】 ・グラフィックデザイナーとして実務経験3年以上の方 ・ポートフォリオ提出 【歓迎する経験・スキル】 ・オリエンテーションを受けて、デザインコンセプトから考える力を持つ方 ・部下のデザイナーの教育を行った経験 ・ディレクターとしての実務経験、もしくは相当するスキル |
ここまで求人例をもとに、グラフィックデザイナーの仕事や求められるスキルについて紹介しました。実際のところ、グラフィックデザイナーの平均年収はいくらなのでしょうか?
転職サービスdodaの調査によると、グラフィックデザイナーの年収データは以下の通りです。
平均年収 | 337万円 |
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20代 | 297万円 |
30代 | 361万円 |
40代 | 388万円 |
50代 | 418万円 |
※出典:転職サービスdoda 平均年収(2017年9月~2018年8月)
https://doda.jp/guide/heikin/syokusyu/#anc_job_01
グラフィックデザイナーの平均年収は337万円です。クリエイティブ系全体の平均年収は379万円なので、水準よりやや低いといえます。
また年齢別の年収の推移を見てみても、20代で297万円、30代で361万円、40代で388万円、50代以上で418万円と、高年収と言いがたいのが事実です。
この要因としては、Web媒体の普及により紙媒体のマーケティング効果の期待値が下がったことで、クライアント側の紙媒体にかける制作予算が減ってきていることなどが挙げられます。年収アップを望むのならば、Webのリテラシーやマネジメントなど、デザイン以外の強みを身につけて活躍の幅を広げることが必要になります。
未経験の状態からグラフィックデザイナーとして働くことになった場合、どのようなキャリアパスが見込めるのか考えてみましょう。以下にキャリアアップのための道筋を紹介します。
なお、デザイナー系の経験者向け求人の場合、2~3年以上の実務経験を求める場合がほとんどです。実績を積みながらスキルを修得していけば今後の見通しが立ちやすくなります。
ニーズの高いWeb制作の知見を身に着け、Webデザイナーとしても仕事ができるようになることを目指します。WebデザイナーはWebサイトのレイアウト設計、掲載する装飾パーツの制作、コーディングが主な業務です。HTMLやCSSなどの習得が必要なことに加えて、デザインに関しても「マーケティング効率の良さ」「表示速度の早さ」などを意識することが求められます。一方で、Webサイトの制作技術も年々向上しているので、グラフィックデザイナー出身者ならではの独創性あふれるWebデザインは強みになるでしょう。
マネジメントスキルを身につけることも考えておきましょう。どんな仕事でも、ひとりきりで働くことはできません。どの職種でも、チームを引っ張れる人材はニーズが高まります。具体的には、チームの業務分担や進捗管理、部下のレビューや育成ができると重宝されます。
グラフィックデザイナーの求人に応募する場合は、通常の就職や転職と同じように履歴書や職務経歴書を提出するほか、「ポートフォリオ」が必要になります。
クリエイティブ業界では、自身の実績を「ポートフォリオ」と呼ばれる作品集にまとめて提出することが一般的です。
グラフィックデザイナーを目指す以上はポートフォリオ作りを避けて通ることはできません。未経験者は業務での制作実績がないので、個人の作品をまとめてポートフォリオを仕上げてみましょう。以下のコラムを参考にしてみてください。
なお、グラフィックデザイナーは印刷物のデザインを多く手がけることから、紙面のポートフォリオを提出するよう求められることもあります。高画質のグラフィックを印刷する以上、制作代もある程度見込んでおく必要があります。求人応募の際は、ポートフォリオを返却してもらえるかどうかを確認しておくとロスがありません。
未経験からグラフィックデザイナーを目指したくても、何からすればよいのか分からない人も多いでしょう。未経験からグラフィックデザイナーになる方法は大きく4つあります。
・専門学校に通う
・ハローワークで申し込める職業訓練校を活用する
・求人媒体社のスキルアップ講座を利用する
・初心者歓迎の求人に応募して実務経験を積む
以下、メリット・デメリットと一緒にそれぞれの方法を解説します。
1つ目は「専門学校に通う」ことです。未経験からグラフィックデザイナーになりたいと考えると、真っ先に専門学校やスクールで技能を学ぶ選択肢が浮かぶかもしれません。
こうした教育機関では、経験ある講師からデザインスキルやDTP・印刷の知識、媒体毎の特性などを学べる点にメリットがあります。一方で、受講期間が長期におよんだり、受講費が高額になるデメリットもあります。
料金 | 数十万円~ |
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期間 | 数ヶ月~数年 |
メリット | 幅広い知識が身につく、働きながら通える専門学校もある、求人を紹介してもらえることがある |
デメリット | 受講期間が長い、受講料が高額 |
2つ目は「ハローワークの職業訓練校を活用する」方法です。
職業訓練校とは、国や自治体が運営している、就職・転職に必要な知識やスキルを学ぶための施設です。簿記やパソコン、介護など地域によって様々な講座を開いていますが、その中にグラフィックデザインを学べるコースがあります。「DTPデザイン科」または「Webデザイン科」のいずれかを選んで応募しましょう。無料~数千円で週5日ペースで学ぶことができ、就業に直結したカリキュラムに魅力があります。しかし、職業訓練校は求職中であること(原則)など受講要件が定められていたり、各コースに定員があるため、注意が必要です。
料金 | 無料 |
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期間 | 数ヶ月 |
メリット | 給付金をもらいながら学ぶことができる、求職中の時間を有意義なものにできる |
デメリット | 受講中であっても就職活動は続ける必要がある、就職が決まったら受講が終わっていなくても終了となる |
3つ目は、「求人媒体社が主催するスキルアップ講座を利用する」という方法です。
求人媒体社が行うスキルアップ講座は、1日や数週間といった短時間で行われることが多く、募集自体も多くはありません。
しかし、求人媒体社ならではのノウハウを教えてもらえたり、未経験者にハードルの高いポートフォリオ作りについて相談しやすい点が魅力です。
料金 | 基本的には無料(内容によっては数千円の費用がかかる場合もある) |
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期間 | 数日~数週間 |
メリット | 転職のために必要なノウハウやアドバイスを得ることができる、必要に応じたポートフォリオ作成などの相談に乗ってもらえる |
デメリット | 開催される回数が少ない・または募集人数が少ない、受講後にその媒体求人社からの応募を約束させられる |
4つ目は「初心者歓迎の求人に応募する」方法です。
最初から「グラフィックデザイナー」として仕事に就くことで、緊張感を持ちながら実践的な知識や技術を身につけることができます。自分からスキルを修得して成長していきたい、という考えの人には向いているでしょう。
しかし、初心者歓迎のグラフィックデザイナーの求人自体が多くはないため、狭き門となることも予想できます。
料金 | 無料(有給) |
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期間 | 企業によって異なる |
メリット | 給与を得ながら知識や経験を積むことができる、プロのグラフィックデザイナーと一緒に働くことで仕事のノウハウを学ぶことができる |
デメリット | 求人数が少ない、仕事であるため、学ぶことを目的とできない |
未経験からグラフィックデザイナーを目指す方法はさまざまですが、Webist編集部のおすすめは、まず求人媒体に登録して転職支援を受けてみることです。まずは、実際に求人媒体に登録し、電話相談や面談をしてみましょう。
無料でポートフォリオ作りや面接対策について、求人のプロが親身に相談に乗ってくれます。上記の4つの方法の中で、どれが自分に合っているのかわからない、など思うところがあれば、まずは相談をしてみることをおすすめします。
今回は、未経験からグラフィックデザイナーになる方法を紹介しました。グラフィックデザイナーは専門職ということもあり、憧れていながらも行動に移せない人も多いかもしれません。大切なのは、ひとつでも行動に移すことです。ぜひチャレンジしてみてください。