私たちの日常になくてはならないWebサイト。そのWebサイトの中身を作っているのがWebプログラマーです。「理系の仕事」「技術職」といった印象があり、未経験からWebプログラマーになるのはハードルが高いと思っていませんか? 今回は、未経験からWebプログラマーになるための技術の身につけ方、資格の取得、仕事の選び方、就業後の年収・キャリアパスなどについて解説します。
Webプログラマーの主な仕事内容は、その職種名から想像できる通り、Webサイト構築を目的としたプログラミングです。Webエンジニアが作成した設計書や、Webデザイナーが作成したユーザインタフェースをもとに、Webサイトを作り上げる仕事です。
プログラミングと一口に言っても、Webサイトは構造上、「クライアントサイド」と「サーバーサイド」の大きく2つのプログラムで構成されており、両サイドのことを把握してプログラミングに臨む必要があります。
また、WebプログラマーはWebサイトだけでなく、仕事の類似性から、スマートフォン向けアプリケーションの作成も含まれることが多くあります。
・クライアントサイドのプログラミング
・サーバーサイドのプログラミング
・スマートフォン向けアプリケーションのプログラミング
大別すると上記のように分けることができるWebプログラマーの仕事。未経験の方にも分かりやすいように以下1つずつ詳しく説明していきたいと思います。
クライアントサイドとは、プログラムを実行する(動かす)側を指します。Webサイト作成上のクライアントとは、ホームページに訪れた利用者(ユーザー)のことです。
利用者のパソコンやスマートフォンなどの端末に入っているブラウザ(Internet ExplorerやGoogle Chrome、Safariなど)が、クライアントサイドのプログラムを実行しています。
クライアントサイドの代表的な言語としては、サイトの表示内容を記述しているHTML、ブラウザ上で動作するスクリプト言語JavaScriptやWebサイトの表示に特化したCSSなどが挙げられます。
サーバーサイドとは、クライアントサイドがユーザー側であることに対して、インターネットなどのネットワークで接続された先にある大きなコンピューター(サーバー)側を指します。
一般的なWebサイトの場合は、クライアントサイドから出された要求に応じて、インターネット上にあるWebサーバーが処理を行ないます。例えばクライアントサイドで検索条件を指定して、検索ボタンを押した場合、検索結果をサーバー側に要求します。その要求に答えてクライアント側ではアクセスできない情報の入ったデータベースを参照する処理などがサーバーサイドで実行されます。
サーバーサイドの代表的な言語としては、PHPやJava、Python、Perl、Rubyなどが挙げられます。
スマートフォン向けのアプリケーションの多くは、Webサイトと同様に、インターネットを介してサーバーと通信を行います。スマートフォン向けアプリは、Webサイト作成上のクライアントサイドのプログラムと構造的に近く、Webプログラマーが作成することが多くあります。
スマートフォン向けのプログラミング言語は、スマートフォンのOSによって分かれており、代表的なものはアップル社iOS向けのSwift、Android向けのJavaがあります。
実際のWebプログラマー求人を参考にしながら、未経験からWebプログラマーに就業した後の年収とキャリアパスをシミュレートしてみましょう。以下に、実際の募集情報をモデルとして作成したWebプログラマーのよくある求人例を紹介します。「未経験者歓迎」の求人と「経験者優遇」の求人を比較しながら、年収とキャリアをアップするコツを解説していきます。
未経験者歓迎のWebプログラマーの求人例をご覧ください。
多くの場合はプロジェクトに参加して、OJTで学びながら仕事を覚えていく形となります。未経験者に対し、入社後に研修をする会社もありますが、期間やレベルは様々です。完全な未経験からのWebプログラマーを目指すのならば、教育環境の良い会社を選ぶのも選択肢の1つです。
雇用形態 | 契約社員 |
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収入 | 月収21万5000円 |
業務内容 | PHP言語を用いたWebアプリケーション開発をお任せします。 まずは先輩社員の指示のもと、テスト業務や簡単なプログラミングから始めていただきます。OJTで先輩社員が教育しながら業務をしますので、未経験からでも安心して働けます。 |
募集要件 | 【必須の経験・スキル】 未経験者歓迎!ソフトウェア開発に関する基礎知識をお持ちの方 【歓迎する経験・スキル】 ・PHP ・Linux |
経験者優遇Webプログラマーの求人例をご覧ください。
未経験者歓迎の求人と比較して、言語やスキル、経験が具体的に求められます。Webサイトのプログラミングに加え、DB/SQLやスマホアプリなどプラスアルファの経験、知識があると有利です。
また、各種の言語について習熟しており、高い生産性が出せる場合は評価される傾向にあります。
雇用形態 | 正社員 |
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収入 | 年収400~600万円 |
業務内容 | ECサイト構築をメインに各種Webシステムの開発・保守が主な業務です。 ・各種Webサイト構築 ・アプリケーション新規開発 ・サーバー/ネットワーク保守運用 上記のうち、経験・スキルに合わせて業務を担当していただきます。 |
募集要件 | 【必須の経験・スキル】 ・実務経験3年以上 言語:PHP、Ruby、Java、Swift、C/C++、Python、JavaScript、C#いずれか DB: MySQL、PostgreSQLいずれか 【歓迎する経験・スキル】 ・Webアプリケーション(データベース接続有)構築の経験 ・Webサービス開発の経験 ・EC-CubeなどのECサービス経験 ・WordPressなどのCMS構築/カスタマイズ/運用経験 ・android、iOSのスマートフォンアプリ開発の知識・経験 ・サーバー構築および運用経験 ・設計工程からプログラム開発までの経験 ・常に新しい技術に対してアンテナを張り、自ら学習できる方 |
Webプログラマーの平均年収は、転職サービスdodaの調査によると425万円です。年代別の平均年収は以下の通りです。
平均年収 | 425万円 |
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20代 | 360万円 |
30代 | 486万円 |
40代 | 573万円 |
50代 | 652万円 |
※出典:転職サービスdoda 平均年収(2017年9月~2018年8月)
https://doda.jp/guide/heikin/syokusyu/#anc_job_07
これは技術系(IT/通信)職種の平均年収456万円と比較すると、やや低い水準です。その理由は、Webプログラマーは年齢が上がるにつれWebエンジニアやプロジェクトマネージャーなど、より収入の高い職種にキャリアアップしていく場合が多いためです。
未経験からWebプログラマーになった後は、Web業界でどのようなキャリアパスが見込めるでしょうか?
Webプログラマーとして培った経験と技術を生かし、さらに上流の工程に携わることがキャリアアップにつながることが多いといえます。
その選択肢について、以下に例を挙げます。
Webサイト構築における上流の工程である要件定義や設計を行うのがWebエンジニアです。Webアプリケーションだけではなく、インタフェースする関連システムやサイト単位でWebサイトを見る視点など、より広い範囲の知識、経験が問われる職種です。
Webサイト構築においてプロジェクト全体を管理する仕事です。Webサイトに関して、全体像を把握した上でチームを統率するマネジメント能力が求められます。
マネジメントを行うプロジェクトマネージャーではなく、Webプログラマーを極める道もあります。プログラミングにおける深い造詣と高い生産性、デザインやSEOに関する知識など、Webサイト構築のあらゆる能力を持つ人材です。既存の技術に関してはもとより、新たに生まれ続ける技術に対し、常にアンテナを張り、貪欲に学び続けられる資質も求められます。
サーバーサイドエンジニアとは、Webサイトやアプリケーションの開発者のなかでも、サーバーサイドプログラミングに特化したエンジニアです。サーバーサイドのプログラムではDBへのアクセスやサイトの業務ロジックと呼ばれる処理が行われています。各種DBソフト、サーバーサイドでよく使用されるインタプリタ言語、コンパイラ言語と言われるプログラミング言語、フレームワークやその他連携するミドルウェアなど様々な知識とスキルが求められます。
職種ではありませんが、生産性の高いWebプログラマーが効率よく収入を上げるためには、会社に所属しないフリーランスという選択肢もあります。フリーランスは会社による各種福利厚生や保証がなくなる代わり、能力によっては高い単価を得ることができること、自分のペースで仕事ができるよう調整可能なことが魅力です。フリーランスとして働く場合は、基本的に自分ひとりで仕事をすべてこなす必要があり、営業や事務の仕事も兼ねていく必要があります。フリーランスを目指す場合は、会社にいる間に各案件の受注から納品までの業務的な流れもつかんでおく必要があります。
ここまで、実際の求人をもとにWebプログラマーの年収やキャリアパスについてお伝えしました。ここからは、実際に未経験からWebプログラマーになるための準備について記載します。
各求人に応募してWebプログラマーとして就職するのが一般的な手順です。他の職種の応募と同様、履歴書を送り、面接を受けるという順序に進んでいくのですが、履歴書や面接では客観的にWebプログラマーとしてのスキルをアピールするのは難しいです。
必ずしも必要というわけではありませんが、未経験・初心者の場合、自身のスキルを客観的に証明するために資格を取得するのもおすすめです。また、求人によっては保有資格により手当がつく場合もあります。
以下、Webプログラマー向けの資格をいくつかご紹介します。
参考:https://www.oracle.com/jp/education/certification/jse11-5570635-ja.html
Oracle認定Java資格(OCJP)は2019年10月現在、Javaの開発を行っているOracle社が提供している公式のベンダー認定資格です。この資格を持つことにより、世界共通でJavaのスキルを証明することができます。
試験は言語のJava言語のバージョンごとに認定があり、等級はBronze、Silver、Goldの3段階です。2019年10月現在では「JAVA SE 11」が最新の言語バージョンです。
PHP技術者認定試験はPHP技術者認定機構の認定する民間資格です。PHPの専門技術取得能力を正当に評価できる技術者認定試験で、「認定者の雇用機会」や「認定者が所属する会社のビジネスチャンス」の拡大を図ることを目的としています。
初級試験、上級試験、認定ウィザードの3つのグレードがあります。2019年10月現在の認定対象の最新バージョンはPHP7です。
参考:https://www.ruby.or.jp/ja/certification/examination/
Ruby技術者認定試験制度は、認定者がRuby技術者としての技術力があり、高い水準のRubyによるシステム開発能力を持つことを示すための制度です。プログラミング言語Rubyの普及と発展のための非営利団体Ruby Associationが認定しています。
現在は「Silver」と「Gold」の2段階であり、その上位となる「Platinum」が現在策定中です。最新の認定バージョンは2.1です。
参考:https://www.jitec.ipa.go.jp/
基本情報処理技術者試験は経済産業大臣が行う国家試験である情報処理技術者試験の1つです。「高度 IT 人材となるために必要な基本的知識・技能をもち,実践的な活用能力を身に付けた者」を対象者としています。以前の名称が第二種情報処理技術者試験だったことから「二種」とも呼ばれます。
Webプログラマーに限らず、プログラマー全体に対する能力検定試験です。上位試験には応用情報技術者試験もあり、情報処理に関する幅広く一定以上の知識があることが試される試験です。
参考:https://www.sikaku.gr.jp/web/wc/
様々な資格検定試験の運営しているサーティファイの認定資格の1つで、Webサイトを構築するために必要なデザイン能力およびコーディング能力を認定する資格です。累計受験者数は14万人以上、Web制作の標準資格として業界で最も受験者が多いとされています。
等級は「スタンダード(初級)」と「エキスパート(上級)」に分かれており、どちらも特別な受験資格はありません。未経験の方でも勉強すれば「スタンダード(初級)」は合格しやすいと言われていますので、最初に取得する資格として狙ってみるとよいでしょう。
経験のない方が独学だけでWebプログラマーとして活躍できるレベルのスキルを身に付けるのは容易なことではありません。特にWebも含めたプログラミングの経験がゼロの場合、独学だと何をしてよいのかわからない状態になってしまうことも考えられます。
ここでは独学以外でWebプログラマーとしてのスキルを身に付ける方法を見てみましょう。メリット/デメリットを含め、解説します。
「未経験からWebプログラマーになりたい」と思う方は、専門学校やプログラミングスクールで技能を学ぶ選択肢が浮かぶかもしれません。こうした教育機関では、経験ある講師から開発手法やプログラミングに必要な言語を体系的に学べる点にメリットがあります。デメリットとしては、受講期間が長期にとなること、受講費が高額になることが挙げられます。
料金 | 数十万円~ |
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期間 | 数ヶ月~数年 |
メリット | 幅広い知識が身につく、働きながら通える専門学校やプログラミングスクールもある、求人を紹介してもらえることがある |
デメリット | 受講期間が長い、受講料が高額 |
職業訓練校とは、国や自治体が運営している、就職・転職に必要な知識やスキルを学ぶための施設です。求職中にハローワークより申し込むことができます。様々な講座がありますが、Webプログラミングを学べるコースもある場合があります(お住まいの地方自治体により差異があります)。無料〜数千円の費用で週5日ペースで学ぶことができ、就業に直結したカリキュラムに魅力があります。一方で、職業訓練校は求職中であること(原則)など受講要件が定められていること、各コースに定員があることに注意が必要です。
料金 | 無料~数千円(補助金が支給される場合もあり) |
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期間 | 半年程度 |
メリット | 格安で受講できる、転職活動に注力できる、基礎的な知識が身につく、求人を紹介してもらえることがある |
デメリット | 受講要件を満たす必要がある、受講要件を満たす場合でも、定員があるため受講できるとは限らない |
求人媒体社が開催する「初心者向けスキルアップ講座」を活用する方法があります。講座では技術面の指導だけではなく、転職・就業につながる情報を得やすいのが魅力です。デメリットとしては、講座の開催が不定期であることや、企業によっては受講後の求人応募を前提としている点があります。求人応募の意向があり、タイミングが合えば応募を検討してみるといいでしょう。
料金 | 無料 |
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期間 | 1日~1ヶ月 |
メリット | ほぼ無料で受講できる、転職に役立つノウハウが身につく、求人を紹介してもらえることがある |
デメリット | 募集枠が不定期・限られている、受講後の求人応募が条件の場合がある |
未経験者歓迎の企業に就職して、OJTで実務経験と知識を得るのも1つの方法です。働きながら実践的な知識を得ることができる点で魅力がありますが、求人枠や対象となる会社は絞られてしまいます。未経験者向けの求人なので、選考では職場環境とのマッチングや人間性も問われます。
また、Webだけに固執せず、近似するプログラマー職で就職してスキルを磨くことも選択肢として考えることができます。プログラマー職でもWebプログラミングをできる機会のある会社は多くあります。応募する前に、面談対策を行っている転職支援サービスの利用を検討してみてください。
料金 | 無料(有給) |
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期間 | 企業によって異なる |
メリット | 収入を得ながら学べる、実務経験が積める |
デメリット | 求人数が少ない、人物評価が重視される |
未経験からWebプログラマーを目指す方法はさまざまですが、Webist編集部のおすすめは、まず求人媒体に登録して転職支援を受けてみることです。上記で紹介した転職支援サービスだけでなく、人材のプロが適した求人選びの方法やアドバイスを無料で実施してくれる点でも価値があります。一人で悩む前に、ぜひ転職支援サービスの活用を検討してみてください。
ここまで、未経験からWebプログラマーを目指すために必要な前提知識や、実際にWebプログラマーを目指す方法をご紹介しました。
未経験からWebプログラマーになるのはハードルが高く感じるかもしれませんが、メジャーなプログラミング言語は、インターネットで学習に必要な資料や情報を十分に得ることが可能です。無料で学べる環境も充実しています。ぜひためらうことなく、行動することから始めてみてください。