様々なWebコンテンツのデザインを手がけるWebデザイナー。「手に職」のイメージが強く、未経験から目指すのは難しいと思っていませんか? 今回は、未経験からWebデザイナーになるための方法や、就業後の年収・キャリアパスについて解説します。
Webデザイナーの仕事内容は、大まかに分けると以下の3つです。
・Webサイトのレイアウト設計
・Webサイトのレイアウトや装飾の制作
・Webサイトのコーディング
Webデザイナーの仕事内容をイメージできるよう、それぞれ簡単にご説明します。
依頼者(社内の事業担当やクライアント)やWebディレクターとともに、ターゲットとするユーザーやWebサイトの目的、コンテンツの中身に応じて要件を整理し、Webサイトのレイアウトをまとめます。デザインを決める際は、スケッチブックなどの紙面を使ったり、Adobe XDなどでワイヤーフレームを引くことが多いです。
レイアウトが決まったら、Webサイトに掲載する装飾パーツ(バナー、アイコン、写真素材)の作成・加工を行います。静止画の装飾パーツを制作する際のツールは、Adobe IllustratorやPhotoshopがほとんどです。
制作した装飾やコンテンツをレイアウト通りに配置するために、HTML・CSS・JavaScriptといった言語でコーディングを行います。画像や文章の表示にはHTML、色や文字サイズの指定にはCSS、Webサイトの挙動に動きをつける場合はJavaScriptを使用します。企業によっては、このコーディング作業はコーダーやマークアップエンジニアが代わりに行うこともあります。
実際のWebデザイナー求人を参考に、未経験からWebデザイナーに就業した後の年収とキャリアパスについて紹介します。以下に、実際の募集情報をもとに作成したWebデザイナーのよくある求人例を紹介します。「未経験者歓迎」の求人と「経験者優遇」の求人を比較しながら、年収とキャリアをアップするコツを解説していきます。
未経験者の応募を歓迎しているWebデザイナーの求人例は、以下の通りです。業務としてはバナーやアイコンなどの装飾パーツの制作から任されていくことが多く、PhotoshopやIllustratorの技能が必須となります。
雇用形態 | 派遣社員 |
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給与 | 想定時給1500円~1800円 |
業務内容 | ディレクターの指示のもと、Web広告バナーのリサイズ編集や、デザイン/サイズ違いの作成などからお願いします。慣れてきたら、バナーのデザイン段階からおまかせしたり、バナー以外のデザイン制作にも携わっていただきます。 |
募集要件 | 【必須の経験・スキル】 ・Photoshop、Illustlatorの基本操作 ・Officeソフトの基本操作 ※ポートフォリオ提出必須 【歓迎する経験・スキル】 ・Webページのデザインの実務経験 ・HTML、CSSコーディングの実務経験 |
Webデザイナー経験者の応募を歓迎している求人例は、以下の2例です。提示される年収に比例して、求められる要件もぐっと増えます。パターンとしては、(1)のようにWebデザインのスペシャリストとして高度な実務経験や部下の教育を求められるか、(2)のようにディレクター的な企画・進行管理といったデザイン以外の技能が求められる傾向にあります。
雇用形態 | 正社員 |
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給与 | 年収400~700万円 |
業務内容 | クライアントのWeb広報案件について、打ち合わせ段階からのコンセプト提案、デザイン制作、クオリティ管理、デザイナーの教育など、Webデザインの制作に関わる業務全般をお任せします。 |
募集要件 | 【必須の経験・スキル】 ・Illustrator、Photoshopを用いたデザイン実務経験(3年以上) ・HTML、CSS、JavaScriptを用いたコーディング実務経験(3年以上) ・レスポンシブデザインのコーディング経験 ・情報設計およびビジネスを理解し、デザインへ落とし込む能力 ・デザインラフからのWebページ設計 ・UI/UXデザインに関する知見 ・若手デザイナーの育成経験 【歓迎する経験・スキル】 ・DTP、イラスト、動画などのWeb領域以外の制作経験 ・jQueryの実務スキル ・Githubを使った共同開発経験 ・デザインガイドライン、レギュレーションの作成経験 ・大規模サイトの新規立ち上げ、またはリニューアル経験 ・クライアントへのプレゼンテーション経験 |
雇用形態 | 正社員 |
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給与 | 年収400万円~700万円 |
業務内容 | 業務内容:始めはディレクターとともにデザイン設計・制作業務に参画いただき、将来的には、プロジェクトの取りまとめもお任せします。 |
募集要件 | 【必須の経験・スキル】 ・Photoshop、Illustrater、Sketchなどのツールを用いたWebデザイン経験 ・ラフをもとにしたバナー、ランディングページ、Webページの作成経験 ・HTML、CSS、JavaScript(jQuery)を活用した実務経験 ・複数人チームの工数・進捗マネジメント経験 ・デザイン、コーディングのレビュー経験 ・顧客との打ち合わせなどへの参加経験 【歓迎する経験・スキル】 ・ゼロからのサービス立ち上げ経験 ・サービス改善やABテストの企画経験 ・新規Webサイトのメインデザイナー経験 ・コーディング規約の策定、又はそれに類する経験(新規立ち上げ等) ・部下のデザイナーの教育を行った経験 ・GitHubを使った共同開発経験 |
上記の通り、Webデザイナーの年収や業務内容は企業やポジションによってさまざまです。実際のところ、Webデザイナーの平均年収はいくらなのでしょうか?
転職サービスdodaの調査によると、Webデザイナーの年収データは以下の通りです。
平均年収 | 357万円 |
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20代 | 319万円 |
30代 | 378万円 |
40代 | 425万円 |
50代 | -(データなし) |
これはクリエイティブ系職種の平均年収が379万円(男性412万円・女性346万円)であることを考えると、やや低い水準です。
※出典:転職サービスdoda 平均年収(2017年9月~2018年8月)
https://doda.jp/guide/heikin/syokusyu/#anc_job_01
この背景には「Webデザイナー」の仕事内容が広義にわたり、給与水準がまちまちであることなど様々な要因がありますが、求人例からも分かるように、スキル次第で高年収も見込める職種だといえます。
Webデザイナーの年収情報について気になる方は、以下の記事もご覧ください。
未経験からWebデザイナーになった後は、Web業界でどのようなキャリアパスが見込めるでしょうか?
求人例から分かるように、デザインスキルを高めて幅広い工程に携わる「制作系」のキャリアを歩むか、ディレクター的な業務を兼任する「企画系」のキャリアの大きく2つのパターンがあります。具体的には、以下のような職種に転身できる可能性があります。
・UI/UXデザイナーとして、より上流かつ幅広いデザインに携わる
・マークアップエンジニアやフロントエンドエンジニアとして技術の幅を広げる
・フリーランスのWebデザイナーとして独立する
・Webディレクターとしてコンセプト設計や企画に携わる
・Webマーケターとしてサイト設計や集客プランを作成する
フリーランスのWebデザイナーとして独立を考えている方は、以下の記事もご覧ください。
今まで、実際の求人をもとにWebデザイナーの年収やキャリアパスについてお伝えしました。ここからは、実際に未経験からWebデザイナーになるための方法についてまとめてみます。
まず、未経験からWebデザイナーの求人に応募するために必要な準備を紹介します。
そもそも求人に応募するためには、履歴書と職務経歴書が必要です。加えて、Webデザイナーの求人に応募するためには、ポートフォリオも作成する必要があります。クリエイティブ業界では、自身の実績を「ポートフォリオ」と呼ばれる作品集にまとめて提出することが一般的です。
Webデザイナーを目指す以上はポートフォリオ作りを避けて通ることはできません。未経験者は業務での制作実績がないので、個人の作品をまとめてポートフォリオを仕上げてみましょう。以下のコラムを参考にしてみてください。
また、必ずしも必要というわけではありませんが、未経験・初心者の場合、自身のスキルを客観的に証明するのが難しいため、資格を取得するのもおすすめです。自身の熱意をアピールできる武器にもなるでしょう。以下、Webデザイナー向けの資格をいくつかご紹介します。
参考:http://www.webdesign.gr.jp/
特定非営利活動法人インターネットスキル認定普及協会が実施する試験で、Web業界で唯一の国家検定です。本資格を取得すると、「ウェブデザイン技能士」と名乗ることができます。試験内容は、デザインの能力だけをはかるものではなく、Webデザイン業務を行う上で必要となる全般的な知識・技術が問われるものとなっています。
等級は1級~3級に分かれており、それぞれに受験資格が定められています。試験日程も決まっているため、あらかじめ公式サイトをチェックして試験対策を行いましょう。
参考:https://www.sikaku.gr.jp/web/wc/
様々な資格検定試験の運営しているサーティファイの認定資格の一つで、Webサイトを構築するために必要なデザイン能力およびコーディング能力を認定する資格です。累計受験者数は14万人以上、Web制作の標準資格として業界で最も受験者が多いとされています。
等級は「スタンダード(初級)」と「エキスパート(上級)」に分かれており、どちらも特別な受験資格はありません。未経験の方でも勉強すれば「スタンダード(初級)」は合格しやすいと言われていますので、最初に取得する資格として狙ってみるとよいでしょう。
参考:https://www.sikaku.gr.jp/ns/ps/
Webクリエイター能力認定試験同様、こちらもサーティファイの認定資格です。
等級は「スタンダード」と「エキスパート」の2つが用意されていて、「スタンダード」については指示通りの作業を正確で合理的に行う能力が求められ、「エキスパート」についてはクライアントのニーズに合わせて創造性の高いコンテンツを制作できる能力が求められます。
Webデザインの現場では、Photoshopは必須のツールです。難易度はそれほど高くないと言われているので、こちらも未経験の方におすすめの資格といえます。
参考:https://www.sikaku.gr.jp/ns/il/
前述したPhotoshop®クリエイター能力認定試験のIllustrator版です。
こちらも等級は「スタンダード」と「エキスパート」の2つが用意されていて、「スタンダード」については指示通りの作業を正確で合理的に行う能力が求められ、「エキスパート」についてはクライアントのニーズに合わせて創造性の高いコンテンツを制作できる能力が求められます。
Photoshop®クリエイター能力認定試験とあわせて取得しておくとよいでしょう。
参考:https://www.adobe.com/training/certification.html
Adobeソフトの技術や知識を有している証明になる資格です。Webデザイナーに関連する資格の代名詞としてはPhotoshopおよびIllustratorがあり、その他、DreamweaverやInDesign、After Effectsなどの試験もあります。
前述したPhotoshop®クリエイター能力認定試験やIllustrator®クリエイター能力認定試験と比較すると難易度は高めといわれていますので、しっかりと準備をして資格取得に挑みましょう。
特定非営利活動法人エルピーアイジャパン(LPI-Japan)が認定する資格です。HTML5だけでなくCSSやJavaScriptなどに関する知識・技術を有している必要があります。
難易度はレベル1とレベル2があり、エンジニアレベルの知識を持っていないと、試験を合格するのは難しいでしょう。合格するための合格点については明確に公表していませんが、7割以上の正解率が必要とされています。
経験ゼロから独学だけでWebデザイナーとして活躍するのは難しいものです。独学以外に、以下の4つの方法があります。
・専門学校やWebスクールに通う
・ハローワークで申し込める職業訓練校を活用する
・求人媒体社のスキルアップ講座を利用する
・初心者歓迎の求人に応募して実務経験を積む
それぞれの詳しい内容と、メリット・デメリットを以下に解説します。
「初心者からWebデザイナーになりたい」と思う方は、専門学校やスクールで技能を学ぶ選択肢が浮かぶかもしれません。こうした教育機関では、経験ある講師からデザインやコーディングに必要な言語を体系的に学べる点にメリットがありますが、受講期間が長期に及んだり、受講費が高額になるデメリットがあります。
料金 | 数十万円~ |
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期間 | 数ヶ月~数年 |
メリット | 幅広い知識が身につく、働きながら通える専門学校やスクールもある、求人を紹介してもらえることがある |
デメリット | 受講期間が長い、受講料が高額 |
職業訓練校とは、国や自治体が運営している、就職・転職に必要な知識やスキルを学ぶための施設です。簿記やパソコン、介護など地域によって様々な講座を開いていますが、その中に、Webデザインを学べるコースも用意されている場合があります。無料〜数千円で週5日ペースで学ぶことができ、就業に直結したカリキュラムに魅力があります。一方で、職業訓練校は求職中であること(原則)など受講要件が定められていたり、各コースに定員があることに注意が必要です。
料金 | 無料~数千円(補助金が支給される場合もあり) |
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期間 | 半年程度 |
メリット | 格安で受講できる、ポートフォリオ制作や転職活動に注力できる、基礎的な知識が身につく、求人を紹介してもらえることがある |
デメリット | 受講要件を満たす必要がある、受講要件を満たしていても定員がある |
職業訓練校について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
求人媒体社が開催する「初心者向けスキルアップ講座」を活用する方法があります。講座では技術面の指導だけではなく、ポートフォリオのアドバイスなど、転職・就業につながる情報を得やすいのが魅力です。デメリットとしては、講座の開催が不定期であることや、企業によっては受講後の求人応募を前提としている点があります。求人応募の意向があり、タイミングが合えば応募を検討してみるといいでしょう。
料金 | 無料 |
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期間 | 1ヶ月程度 |
メリット | ほぼ無料で受講できる、転職に役立つノウハウが身につく、求人を紹介してもらえることがある |
デメリット | 募集枠が不定期・限られている、受講後の求人応募が条件の場合がある |
未経験者歓迎の企業に飛び込んで、実務経験を積みながら必要な知識を学ぶ手もあります。働きながら実践的な知識を吸収できる点で魅力がありますが、そもそも求人数が少なく、狭き門であることが多いです。未経験者向けの求人なので、選考では職場環境とのマッチングや人間性も問われます。応募する前に、面談対策を行っている転職支援サービスの利用を検討してみてください。
料金 | 無料(有給) |
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期間 | 企業によって異なる |
メリット | 収入を得ながら学べる、実務経験が積める |
デメリット | 求人数が少ない、人物評価が重視される |
未経験からWebデザイナーを目指す方法はさまざまですが、Webist編集部のおすすめは、まず求人媒体に登録して転職支援を受けてみることです。上記で紹介した転職支援サービスだけでなく、人材のプロが適した求人選びの方法やポートフォリオへのアドバイスを無料で実施してくれる点でも価値があります。一人で悩む前に、ぜひ転職支援サービスの活用を検討してみてください。
ここまで、未経験からWebデザイナーを目指すために必要な前提知識や、実際にWebデザイナーを目指す方法をご紹介しました。
未経験からWebデザイナーになるのはハードルが高く感じるかもしれませんが、インターネットで学習に必要な資料も揃っていますし、無料で学べる環境も充実しています。ぜひためらうことなく、行動することから始めてみてください。